【名寄】

広大な面積を有する北海道の地域医療を担う人材を輩出する旭川医科大学の西川祐司学長、内科学講座教授・内科長の藤谷幹浩副学長、地域医療医育成担当副学長で地域共生医育センター長の牧野雄一教授の3氏に、地域医療のあるべき姿、同大学での取り組み、道北の中核病院である名寄市立総合病院との連携などについて話を聴いた。さらに、名寄市病院事業の和泉裕一管理者に名寄市立総合病院が果たす役割などについて話しを聴くことができたので、2回にわたって掲載する。

―学長には、大変お忙しいところ、昨年に引き続き取材対応いただき、ありがとうございます。

昨年の取材の中で、「地域医療を大学全体で担っていくことが重要で、地域共生医育センターなどを充実し、マルチタスク医を育成する」などと語られました。1年経過後の取り組み状況はいかがですか。

西川学長 地域共生医育センターには、スタッフとして4人の教員を配置し、主に地域のニーズ把握と、学生に対するアプローチ(地域への医療実習を通した地域医療への理解)などを主に実施しています。

牧野教授 具体的には、センターの中に、地域医療ニーズ調査研究部門、地域医療医育成部門、地域医療医キャリア支援部門を設け、3部門ともスタッフを配置して取り組んでいます。

ニーズ調査研究部門では、各自治体、北海道国保団体連合会などと協定を結び、患者の受療動向などを客観的に把握するため、道北の7町村で国保データに基づいた調査を実施し、一部の結果は、内科合同会議とも共有しています。

マルチタスク型地域医療医とは①病院総合診療医、②家庭医・在宅医療、③救急・災害医療、④離島・へき地医療―の四つの要素を中心とする総合的な診療能力を持ち合わせた医師のことを指します。

このような医師を育成するためには、学生時代の早期から地域医療の現場を体験させることが非常に重要です。具体的な実習病院として、①は旭川医大病院、清水赤十字病院、②は更別村国保診療所、③は旭川医大病院、名寄市立総合病院、④は利尻島国保中央病院、礼文町国保船泊診療所―をコア施設にして、そこの先生方に学生を実習として受け入れていただき、現場で体験を積んでもらっています。設置後、約1年が経過しました。

―内科を医局・講座中心から、大講座制(中に五つの分野を設ける)にして、「内科合同会議」を設置して、丸1年が経過したかと思います。この間の取り組みと、大講座制にした成果、今後の課題などについてお聞かせください。また、5月13日付けの北海道新聞では、「枝幸出張・名寄を『中継』」などの医師派遣についての記事が掲載されました。記事の中では、内科合同会議が主体の医師派遣で、「名寄を中継地点とする『玉突き支援』を、6月にも始める」などとありました。①名寄を中継とする枝幸への派遣は6月から予定通り始まりますか②内科合同会議主体による医師派遣の今後について伺います。

藤谷教授 内科学の講座の中には、五つの分野を設けています。まず、医師派遣については、文部科学省から、「地域医療は大学病院全体で支えるべき」との方針が発せられました。これまでは、内科の各講座(医局)が責任を持って医師派遣を行っており、大学病院としては、全体を把握できておらず、各講座に一任している状況でした。

文科省のメッセージが示されたことにより、まずは内科全体で相談して、医師派遣することになりました。昨年度は、どの診療科がどこに派遣しているのかを集計しました。ニーズが現状にあっていない面も、一部にありました。地域共生医育センターのニーズのデータも見ながら、どこに派遣すれば効率的かを確かめ、検討を行いました。

医師派遣のもう一つの問題は、距離的な側面です。例えば、大学から枝幸町の病院へは前泊が必要になっていました。距離的な問題を解決するためにも、地域の中核病院に医師を派遣し、そこから、さらに地方の病院に派遣する仕組みを考えました。「玉突き」というより「リレー方式」です。名寄からだと前泊の必要がなくなり、費用面と移動リスクも少なくなり、今回の方式を考えました。

また、10年未満の若手の先生方は、専門医を取得しておらず、専門医を学ぶプロセスの中にあります。消化器内科であれば、枝幸に直接赴任すれば、消化器内科の指導医が不在で、教育の面でも不安があります。その点、中核病院である名寄市立病院に勤務し、週1回行ってもらう形であれば、名寄には指導医も多く教育面でも安心です。そういった費用、教育、移動リスクなどの面から考えました。

現在、枝幸国保病院には、大学から毎週1回消化器内科医師を派遣しています。特に、冬期間はリスクもあります。6月からは2週に1回、名寄市立病院から消化器内科医の派遣を行い、2週に1回は大学から派遣します。部分的にスタートして、全面的に実施したいと考えています。

課題として、自治体が異なるので給与面、さらには、名寄市立病院では先生が週に1回減ることになります。現在、名寄には消化器内科医師を5人派遣しています。週に1回は1人減ることになるので、減員のままで診療が成り立つのかを検討し、必要に応じて大学から名寄への増員を考えています。

その他の中核病院を通してのリレー方式は、内科合同会議の発足前から、中核病院である遠軽厚生病院を基点として網走厚生病院に行っています。網走厚生病院では、消化器内科医が6人いたのが2人になり、危機的な状況となっていました。内科合同会議というより、消化器内科として、遠軽厚生病院を充足して網走厚生病院へ派遣するリレー方式を既に実施しています。

(続く)

西川学長

藤谷副学長兼内科学教授

牧野地域医療医育成担当副学長兼教授