【名寄】名寄市立総合病院(眞岸克明院長)では、患者の体に負担の少ない「低侵襲心臓外科手術~胸腔鏡下右小開胸心臓手術(MICS)~」を導入し、このほど第一例目の手術を成功させた。これまで札幌や旭川の専門病院まで足を運ぶ必要があった患者にとって、地元で最先端の治療を受ける道が開かれた。高齢化が進む地域において、医療アクセスの向上と患者負担の軽減につながる大きな一歩となる。
同院心臓血管外科診療部長の木村文昭医師(49)によると、従来、心臓手術は胸の真ん中を20~30cmにわたって切開して行うことが主流で、患者の体への負担が大きく、回復にも時間がかかっていた。しかし、今回導入された低侵襲心臓外科手術は、胸を約8cm切開し、内視鏡カメラを挿入し、モニターの映像を見たり、目視で確認したりしながら手術を行うため、傷が小さく、術後の痛みが少ないのが特長。
同院では当面、大動脈弁など心臓弁の機能不全により大動脈弁狭窄(きょうさく)症や僧帽弁閉鎖不全症などを引き起こす弁膜症に対し、低侵襲心臓外科手術を実施することとしている。
この手術の第一号となったのは、大動脈弁狭窄症を患う80代の女性。今年6月に行われた「胸腔鏡下右小開大動脈弁置換術」は、手術時間3時間47分、出血量も290mlと少なく抑えられた。女性は術後約2週間で自ら歩いて退院し、手術前の倦怠感もなくなった―と話しているという。
この手術は、患者に優しい手術である一方、より高難度であることが短所―と木村医師は話す。
MICSは高度な施設基準と技術が求められ、豊富な実績や学会の認定専門医(MICS認定医)がいることなど厳しい基準を満たす必要がある。道内でこの認定医資格を持つのは木村医師を含め12人のみ。上川管内で実施できるのは旭川と名寄のみという。
これまで地域の患者は、MICSを受けるためには旭川や札幌の医療機関で受けざるを得なかったのが実情で、木村医師は地元で先端治療を提供できる意義を強調する。
同院の試算では、この手術の対象となりうる患者は年間約20人だが、地域人口を考慮すると「本当は30人から40人程度いてもおかしくない」と見ており、これまで都市部へ流出していた患者の受け皿となることが期待される。
一方で、医師は心臓弁膜症に特効薬はない現実にも触れる。「血圧が高いというのは、心臓がそれだけ頑張って血液を送るということ。各弁にかかる負荷も大きくなる」と話し、生活習慣管理の重要性を説く。
木村医師は「患者にとって優しい手術であり、高齢化が進む地域のニーズに応えることができる。今後は、心臓弁膜症のみならず、冠動脈疾患や不整脈疾患など他の心臓疾患にもこの技術を応用していきたい」と意欲を見せる。

手術を解説する木村診療部長(右)と眞岸院長









